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mSelection   池田史子さん(gift_)厳選のBOOKSプロダクトセレクション。

THEME IS Design?

SELECTOR: 池田史子さん(gift_) DATE: 2008.04.09.

その都市をあげてのデザインフェスがこの東京はもちろんのこと世界各地の主要都市で開催されるようになって久しい。10年ほど経つ。中でも、やはりいまだにその殿堂と言えば、毎年春に開催される「ミラノ・サローネ」。世界中からデザイナー、バイヤー、メディアが集い、街中がデザイン一色に溢れる状況が今年もにぎやかに繰り広げられることだろう。そして、こうした動きと共に皮肉なことに、この10年の間に「デザイン」という概念/言葉が、あたりまえのように認識され、さらには、正直言って「消費」もされてきたことも否めない事実。20世紀終盤に始まった、いわゆるデザインブームを牽引した立役者のひとり、フィリップ・スタルクも先頃、ショッキングな「デザイナー廃業宣言」をしたばかり。その時々の時代製精神を体現する「クリエイティビティ」を果たして今や何と呼称すべきなのか… その脱領域化、超個人化が加速して行く「デザイン」を再定義する潮流を秘めていたのでは、と思う本 (独断ですが!) をご紹介してみたい。

ITEMS:
RETHINK

著者:Tom Dixon 出版社:Conran-Octopus/UK/2000

この本が出版された2000年。それまで、「造形」「機能」のみで語られて来たプロダクト/空間デザインの立脚点を解体し、まったく視野を変えたところー日々の生活を「モノ」でなく、「行為」に置き換えたところから発想しようとしたプロジェクトに参加していた当時の私のバイブルのひとつがこの「RETHINK」。元々、トム・ディクソンの造形や素材の選択眼のファンだったのだが、限定された機能のために製造されたアノニマスな道具が「SLEEP」「WASH」「WORK」「PLAY」と言った「行為」で再ファイリングされ、「デザインプロダクト」として再発見されたこのコレクションブックには完全にノックアウトされた。「RETHINK」とは意識の錬金術。トム自身が80年代に所属していた「クリエイティブ・サルベージ」そのものなのだろう。

ITEMS:
one hundred and one things to do

著者:Kesselskramer 出版社:BIS Publishers/Netherlands/2006

「Nothing Cooler than Dry」/droog=dry。この「No Design」を標榜するクリエイティブ・プロジェクトDroog Designに初めて出会った時の衝撃は大きかった。
Droog Designは特定のデザイナーではなく、キュレーターが中心となって活動しているレーベルのような動きで、日常の中で見過ごしていた単なる「もの」に、ウイットに満ちた「展開」を与えることで、その存在意義(固定観念)を鮮やかにずらしていく作品群で知られている。牛乳瓶のシャンデリアや古着の椅子を目にしたことのある人は多いと思う。実はこの「視点の変換」はマルセル・デュシャンが既に20世紀初頭に気づいてしまった仕掛なので決して彼らが先駆者ではないのだが、「もの」の呪縛から解き放たれた、意識や行為への仕掛の連作「do」シリーズは、この集団から生まれた最高傑作であると思う。ポップなコンセプチュアル・アートとも言えるこの尋常でない軽やかさと滋味は「意識の変換装置」としてはひとつの頂点を極めている。

ITEMS:
Libre De Contexte, Context-Free, Kontext=Frei

著者:Libre De Contexte, Context-Free, Kontext=Frei 出版社:Birkhauser / mu.dac/ Switzerland/2003

ex-designer=元/脱デザイナー を自称し、プロダクトデザインの枠におさまらない自由な活動を展開しているマルティ・ギセ。2000年にはDroog Designのdo createにも参加していた。マルティ・ギセの名を一躍有名にした「フットボール・テープ」は、先に発表されたAutobandテープのコンセプトを派生させたもので、サッカーボール、ゴールネット、フィールドに引かれるライン、優勝トロフィーに至るまでそれぞれの形状概念をビニール・テープ化し、そのテープで包むすべてのものがその概念のサインのもとにそれそのものに変換されてしまうというシンプルかつ非情なコンセプトワークである。なぜ非情かというと、本来の機能や意匠を有していたあらゆるものが、彼の選んだ「サイン」としてのテープに巻かれることによって、限定的な「そのもの」に包括されてしまうから。彼の飄々とした作品の外観やキュートなタイポグラフィーにだまされてはいけない。いかなる確固たる存在もマルティが ”Context-Free”=その文脈を根底からあっさり解体、してしまうのである。愛すべき概念デストロイヤーとして、私は彼をとてもリスペクトしている。

ITEMS:
Gelman/Davis

著者:Gelman/Davis 出版社:Gelman/Davis Exhibition Catalogue/New York and London/2004

究極まで単純化されたミニマルな「図形」を精密に緻密にコンポジションするアレクサンダー・ゲルマンのビジュアルワーク。完全にオートマティックとしか思えない独特の緩いグラフィティ・ドローイングや写真で、ここのところ日本でもファン急増中のポール・デイヴィス。この盟友同士のコラボレーションエキシビションの図録が本書。一見正反対の表現様式の彼らに共通するのは洗練されたシンプルなビジュアルの内部からじわじわとにじみ出て来る奥深いシニカルさだろうか。2人の作品を私はとても愛しているのだが、それはその概念やウィットのきいた表現その他諸々「目に見えるものすべてがただひとつのすべて」という厳然たる存在感ゆえのような気がする。インターネットが普及してこれだけフラットな世界になっても突出した個性が存在し得る事実は、デザインやクリエイティブをライフワークとしている人たちがふと抱きがちな、昨今の袋小路的虚無感を無意味な絶望としてあっさり切って捨ててくれる頼もしさを感じるのである。

SELECTOR PROFILE
池田史子 / Fumiko Ikeda (gift_)

都市デザイン研究所(後ICC)、IDEEを経て2005年にgift_設立。
IDEEではWORKSTATION、Sputnik、TDBの立ち上げに参画。現在はDesignTideなどのデザインプロジェクトの企画制作等を手がけつつ、サウンドアート、映像等の発表を行う実験室本屋を主宰。
2006年、ASYLと共にゴミの資源化デザイン・プラットフォーム=[treasured trash/タカラモニナッタゴミ]をスタートさせた。

[Web]

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