Columns moonlinxが気になるアーティストやクリエイターによるコラム
/ (こうづき だいすけ)
インタビュー - 参(mile)
2008.05.29
さて、ミラノサローネで発表された新作プロダクトの紹介はひとまず終了しまして、ここからはサローネ期間中に行った日本人デザイナーへのインタビューを掲載します。
インタビューでは、「今回の作品のコンセプト」、「制作時のプロセスやエピソード」、「デザインが未来に出来ること」をデザイナー達に共通の質問として投げかけました。それぞれが自分たちなりに率直に話してくれた内容はとても興味深いものでした。
まずは、サテリテに出展していた松尾伴大、甲斐健太郎、下山幸三の三人からなるデザインプロジェクト「参」(まいる)のインタビューです。サローネでは英語名である「MILE」で出展した彼ら。松尾さんと下山さんがインタビューに応じてくれました。

写真/太田拓実
m)今回、三作品も出展ですが、どれも凄く分かりやすくて良いプロダクトに仕上がっていますね。
下山 - ありがとうございます。実はこれまで私達の作品は、それが照明であるのか、なんであるのかが分かりにくい、と言われることが多かったので、今回は誰が見ても分かりやすいものを意識して作りました。
1.コンセプトについて
下山 - 三作品の統一のコンセプトは「Δt -an emotional moment-」です。写真のように、静止画ながら、何十分の一秒の瞬間で躍動感を切り取る「動き」が入ったものをプロダクトに落とし込めないかと考えたことから制作がスタートしました。プロダクトは通常、止まった状態を意識することが多いので。
▲フロアライト「vertical rainbow」

写真/太田拓実

写真/太田拓実
松尾 - これは「佇まい」を重視しました。一見すると、すぐに左右に揺れてしまいそうな、アンバランスなプロポーションなのですが、実はバランスを保っているというところを敢えて意識しました。
シェードの部分は、歩きながら見るとそこから漏れる光が残像のように見えるようにしています。
下山 - この作品は立ち止まって見つめるのではなく、人が生活のなかで動いているときに、どう見えるかが重要だと考えました。
m)そうですよね。生活って動いているものだから、その中でプロダクトが存在するという意識は重要ですね。
松尾 - そうですね。MILEはプロダクトを単体としては見ていません。生活の中でどう使われるのか、やそのプロダクトが生活をどう変えているのかを考えているので、このようなデザインになっていくのです。
▲時計「good aftermoon」のコンセプト

写真/太田拓実
松尾 - まず、リング(輪)だけの時計ができないのか、と何気なく考えたのが始まりです。となると時間をどう見せるかということが課題になりますが、そこを光の筋で表現しようと。
m)ナイスアイデアですね。
下山 - 線で表現することで、リングによって切り取られた壁の表情が豊かになる効果もあります。
松尾 - あと、時の流れの中で時計がどう影響するのかを考えました。朝昼夜と部屋に入る光の量や明るさって違いますよね。その時間帯ごとに存在する時計はなにかをイメージしたんです。それもあって、敢えて針を光の筋−−私達は「指す光」と呼んでいますが−−にしたんですね。周りの光によって見え方も影響してきますからこの時計の見え方も変わってきます。
m)実際のgood aftermoonにはコードが付いていますが、コードレスバージョンも見たいですね。
松尾 - そうですね。次の課題としてそれを考えています。今回、この「指す光に」LEDを使いましたが、さらに省電力にしていくことを考えています。
▲椅子「crossing ribbon」のコンセプト

写真/太田拓実

松尾 - 参として椅子をつくる事を決めた時に、真っ先に考えたのは、新しい構造の椅子を作りたいということでした。そこで考えたのが「帯(リボン)を折る」というコンセプト。なぜ「帯を折る」のかですが、海外のリボンの使い方は単に「結ぶ」んですね。でも、日本は違う。「折りながら結ぶ」んですよ。私達はこの行為がとても日本的だと感じています。だったら、それを構造体としてうまく表現したいと思ったんですね。そこから、このプロダクトの象徴である「赤いライン」がまさに折っているようにしたんです。
m)赤と白にされたのはなにか理由があるのですか?
下山 - 赤と白の組み合わせは「めでたい」からです(笑)。縁結びですよね。
松尾 - このようにバックグラウンドはとても日本的なんですが、実際に出来上がったものは意外に日本ぽくなかったんですよ。そこは作っている私達としても面白かったですね。
m) 構造も面白そうですね。
松尾 - 本来は裏から見せたいのですが、実は座面と背板の部分が風呂敷的な構造なんです。内側がベルクロ状になっていて、赤と白の二つの構造体が座面や背板をはさむようになっています。
m)これはスチール製ですか?
下山 - はい。将来的にはアルミなどで軽量化を考えています。
2.プロセスについて
m)制作のプロセスの中でのエピソードなどがありましたら訊かせてください。
松尾 - 参は普段はそれぞれ東京や大阪と遠隔地に住んでいますので、コミュニケーションをとることがネックでした。今回の出展にあたって、早朝スカイプミーティングをやっていったんですよ。これが思いのほか効果的に働いて。会社に行く前だからみんな時間が決まっているので、効率よく話を進めることが出来るんです。そこに、メンバーの甲斐(健太郎)が三人が参加して共通のホワイトボードにいろいろ書き込める、お絵描きツールを開発してくれたんです。それによってコンセプトの面でとことん詰められたのも大きかったですね。
m)技術肌である参ならではの方法論ですね。
下山 - あとは三作品出展ということで、各作品ごとに誰かがリーダーを担当する「リーダー制」も採用したんです。でも三作品ともデザインは全員でやるので、そのリーダーがスケジュールやプロセスを責任を持って全部管理しているという。会社のようですね(笑)。でもこれがうまくいったんです。

3.未来に対してデザインができること
松尾 - 私達がやりたいことってデザインというより発明に近いと思うんです。発明とは新しいものを作ることですよね。そして、そこにデザインを加えることでより生活の中に入って行けると考えているんです。その意味でデザインはとても重要なものだと思っています。
新しいものが世の中を変えて行くことに凄く魅力を感じていまして。もちろん、それがすべてではないと思いますが、モノが世の中を変えて行くこともあると思うんですよ。私達はそんな世の中を変える新しいものを作りたいと思っています。
プロフィール 参 (まいる)
1999年筑波大学在学中、松尾伴大(音響エンジニア)、甲斐健太郎(ソフトウェアエンジニア)、下山幸三(インテリアデザイナー)の3名によりデザインプロジェクト参/mile結成。
2000〜2003年同校卒業後、各自がそれぞれの分野で活動しつつ、プロジェクトを継続。2008年、参/MILEに改名し本格始動。参人よれば文殊の知恵。それぞれの専門性を活かしてデザイン活動の場を広げていく。ユーモアのあるストーリーで、人・モノ・空間を心地よく結ぶデザインを行う。
輪島塗スピーカー「Somethingto Touch」にて、グッドデザイン賞受賞(2006)他
Author
Daisuke Ark Kozuki(こうづき だいすけ)
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