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新進気鋭から著名人までアーティストやクリエイター達のエッセイやインタビューをお届けします。
彼らが何を見、何を感じているか。アートの最前線、そして未来を読み取る特集です。
第6回 - Donny Grafiks 山本和久 Simple is the best?
今年も10月31日からはじまるDesignTide。そのDesignTideにtreasured trash や Tシャツのデザインなどで参加するDonny Grafiks山本和久はmoonlinxフライヤーの デザインも手がけている。 彼の特徴である"シンプル"、"ミニマル"は明瞭且つデザイン性の高さが評判だ。 本当に必要な要素だけを表現する彼のデザイン方法論はどのような考えから 生まれていくのだろうか。 ジャズが流れる、居心地の良い彼のオフィスで話を訊いた。
そんなに詰め込む必要はないんじゃないかと思います。

今回、11月に行われるPechakucha Night×DesignTide2007で、moonlinxがサポートするにあたり、 DesignTideの会場で配布するフライヤーをドニーさん(山本氏の愛称)にお願いしたわけですが、 シンプルでインパクトのあるものになりましたね。我々としてもとても喜んでいます。
「ありがとうございます。moonlinxの、人と人とが繋がって新しいものができていく、 というコンセプトに発想を得て、これからの新しいつながりも感じさせる、そんなデザインを、 単純な円の組み合わせをベースに表現してみました。」
ドニーさんの作品といえば、ほかにIID世田谷ものづくり学校のロゴや exciteデザイナーズポータルを思い浮かべますが、一貫したデザインポリシーを感じます。 それは「シンプル」、「ミニマル」に尽きると思うのですが、ご自身ではどのようにお考えですか。
「例えば、同じ色、同じ長さの線がでも真っすぐに立っているのと、横になっているのとでは 印象が違いますよね。その情報だけで印象が変わってくるので、デザインには無理に情報を あれこれと余計な色やかたちを詰め込まなくてもいいのではないかと考えています。 日本には今すごくクリエイティブなデザイナーが多数いると思いますが、 そうでありながら、一般の人達が目にする店舗や環境においては、まだまだそのクリエイティブな デザインが反映されたものは少なくて、見ていて気持ちいいと感じられるものは 多くないように感じます。それは情報要素を詰め込みすぎたデザインが多いということも 一因だと思うんですよ。 ですので、僕が関わる仕事はなるべくそうならない答えを出したいなと考えています。」
情報が氾濫している時代ですからそれが如実に出てくるのかもしれないですね。
「そうですね。選択肢が多くなったことでより趣味趣向が分散した感もありますが、 相対的な視点で判断する状況が多いことで、自分なりの答えを見つけるのが なかなか難しい時代だと思います。だからどうしても強い思想を持ちづらい。 そこで我慢できずに答えをすぐに知りたがる人が多くなる。そうするとそんなニーズに答えるために そういった流行りのようなものをメディアがそれらしく発信する。 そのせいで想像させない状況が多いと思うんですよね。 あと、いまはこのトレンドだからこっちにいかないと、とメディアがあおるとそれを 鵜呑みにしてしまうような。 そうした情報に流されない自分なりの価値観をしっかり持てる人が増えてほしいと 思いながら作っています。」

いまのデザインのスタイルに至った経緯を教えいただけますか。
「最初はポップアートの雰囲気であるアメリカの大衆文化にあるデザインや レコードジャケットのビジュアルが好きで「これがかっこいい」といったノリが 先行したデザインもしていました。ですがそのうち、これは何のためにやっているんだろうか、 とかもっと効果的に見せるにはどうしたらいいのかということを考えるようになったんですね。 結果、そんなに余計なものはいらないのでは、という現在の考えに至りました。 あとは、以前海外でトラブルが起きたときに絵を書いて現地の人に説明したことがあるのですが、 言葉より絵の方が伝わるんですよ。そういう経験もしているので。」
“シンプル”とか“ミニマル”というと、日本古来の”引きの美学”も当てはまると思うのですが、 そういうものに共感を覚えますか。
「多くを語らなくても伝わるという思想においては近いのかもしれませんね。 家紋にしてもそうですが、昔からある日本の意匠はわかりやすいものが多いですよね。 以前は表面的にはいいものだと認識はしていましたが特別意識していませんでした。 でも今になってその良さが分かってきてより深く理解できるようになってきたと感じます。」
シンプルではないデザインをすることもあるのでしょうか。
「ありますよ。例えば乱雑なイメージのほうがより意味を強める場合はシンプルなだけでは足りないので それに沿ったデザインをします。ただ、そういうケースでもなるべくシンプルに 仕上げるようにはしています。デザインは基本的にクライアントから仕事を受けるものですので、 話を聞きながらいかにクライアントのやりたいことを引き出すかが重要で、 さらにクライアントが思っていることを思っている以上のものに仕上げることを心掛けています。 幸いDesignTideのような実験的な作品を発表する場もあるので、そちらでは自由にできますが。」
デザインのトレンドと生活に密着したデザインは切り離してはいけないもの

現在、ドニーさんからみて、デザインに対する一般の認識はどのようなものだと考えていますか。
「デザインに対して意識がそれほど高くない業界がありますよね。 例えば、公共にあるデザインがすべて優れているかというとそうではないですよね。 あまりそこを意識しているようにはみえないものも多いと思います。 リリースしたものに如何に苦情がこないか、そういう手間を省けるかということが 先に立っていることで、角をとって意味は曖昧で情報は全部詰め込むといったものが 多いように感じます。結果、なんとなく間違いではないけど特に何も伝わらないものが 出来上がっているのでは?公共のものって多くの人が目にするものだし、特に子供にとっては 文化的な素養になるもので、本来はとても重要だと思うんです。 そのあたりをより強く意識した環境が増えれば良いと思いますね。」
では、最先端のデザインとかトレンドなどとは別の、もっと生活に密着した部分のデザインを もっとやっていきたい?
「というよりも、例えば、ミラノサローネで起こっているような世界のデザイナー達の 高いクリエイティブワークと同じテンションのものが生活の中に当たり前に存在する、 ということになれば良いと思っています。別に切り離す必要はないですよね。 それが切り離されていることがぼくに釈然としないところでもあるんです。」
なるほど。確かにクライアントも切り離して考えてしまうところがありますよね。
「そうなんです。仕事のなかで"子供用だから解り易いデザインにしてください”という 要望も時にはありますが、それはとても曖昧なことですよね。おそらく前例が そうであったからであって、子供用=解りやすい=いわゆる子どもっぽい、 とは言えないかもしれないですよね。僕はそういう部分に対して”本当にそうなのだろうか” という観点から実際に表現して、見せていきたいと思っています。」
そういった一般の人達のデザインに対する意識がもうすこし上がればいいですね。
それでも少しずつ、デザインに対する意識が浸透してきていますよね。

ミラノサローネの話ですが、プロダクトやインテリアにおけるイタリアのトレンドから 二年くらい遅れて日本にやってくる、と言われますよね。
「まだ、追いかけている状況も少しあるのかもしれませんね。本当はタイムラグ無しに、 ダイレクトに普段の一般的な生活に入り込んでくれば面白いのでしょうね。 とはいえ、少しずつそのラグも短くなってきているようには感じてはいますが。」
最近は日本でも一般に広く知られた、知名度を持ったクリエイティブディレクターが何人か出てきて、 いわばヒーロー的な存在になっていると思いますが、これはこれでデザインに対して 人の関心が向けられて良い傾向だとだ思っているのですが、その辺はどうお考えですか。
「みんながデザインに意識を向けてくれるための良いきっかけになるでしょうね。 少し前だと"デザイン家電"とわざわざ銘打って家電が売り出されていましたが、 最近は言わなくなりましたよね。メーカーもデザインが重要だということで、 それを普通に意識し始めてきたと思うんです。 そうこうして少しずつですが浸透してきていると思いますね。だから悲観はしていないです(笑)。」
今後やっていきたいことはありますか?
「シンプルなデザインを突き詰める、ということは既に試行錯誤され尽くした感があるので、 そうではない表現をどれだけ見つけられるか、ということを考えるよう心掛けています。 ”発想の転換”だったり、”視点の変えたもの”だったり、 そういうデザインをしていきたいですね。なかなか難しいですが。」
山本和久 Donny Grafiks
多摩美術大学卒。フラミンゴ・スタジオを経て独立。ミニマムな表現で最大限の効果をコンセプトに CIからエディトリアル、Webまで幅広く活動。最近では IID(世田谷ものづくり学校)の ADやexciteのデザイナーズポータル、国立新美術館のSOUVENIR FROM TOKYO(SFT)での 「FROM TOKYO」展、SFT×UTのTシャツプロジェクトの参加など。
Webサイト http://www.donnygrafiks.com
