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+Art

新進気鋭から著名人までアーティストやクリエイター達のエッセイやインタビューをお届けします。
彼らが何を見、何を感じているか。アートの最前線、そして未来を読み取る特集です。

第5回 - 小山泰介”シンプルに撮る”ということ

小山泰介は現在最も注目されている若手写真家の一人である。狭い空間で、その一瞬を独特の視点でパッケージングした作品が魅力で、 様々な雑誌に彼の作品が登場し、話題となっている。 彼はこれまでも一貫して"写真を撮るときに感情を込めることはない"と言って来た。よりシンプルにより平静に。 moonlinxのコミュニティのトップページの壁紙(2007年9月現在)でもお馴染みのその彼に現在の状況を訊いた。

自分の作品を提供することが楽しめるようになって来た。

−最近は小山さんの写真を雑誌や書籍などで数多く見るようになってきました。 宮部みゆきさんの最新刊「楽園」上下巻の表紙などがその代表だと思うのですが、時間の使い方は変わりましたか。

小山「みんなからは忙しいと思われていますけど(笑)。宮部さんの表紙は写真集の中から”この写真を使いたい” というお話をいただきました。未発表の作品など、既に撮ってある写真から提供することが多いんですよ。 ただ、もちろん全部というわけではなくて。9mm Parabellum Bulletというロックバンドの今度のジャケット写真は撮りおろしです。

−小山さんの写真で人物が入ったものはあまり見かけたことがないのですが、今回はそのバンドのメンバーを撮影しているんですか。

小山「いえ、メンバーを撮っている訳でありません。相変わらず、今と同じようなテイストです(笑)。」

−小山さんはどちらかというとエレクトロニカなどの音楽が好きですよね? まったく違う趣向のロックバンドの作品を手がけると言うのは不思議な感じがします。

小山「ロックも好きですけど、以前は、自分の予想外のところに作品を提供するのはどうかと思っていましたが、 最近変わってきましたね。アウトプットを限定してしまう必要はないなと考えるようになりました。 "いろいろやってみようモード"といういうか。楽しめるようになってきましたね。」

写真を撮るときに感情を出来る限り込めない

-楽しめるようになってきた、というお話ですが、そんな風に考えるようになってきたきっかけはあるのですか?

小山「宮部みゆきさんの「楽園」のときですね。物語だしミステリーなので、実は迷ったんです。 読者にとってはその物語の内容と写真を関連付けて考えてしまうから、それによって自分の作品のイメージが 変わってしまうのでないかと思いました。でも考えていくうちに、どうなっていくのか分からないのならやってみたらどうだろう、 と思えるようになってきたんです。先日、実際に印刷された「楽園」を読んで、表紙に使っていただいてよかったなと思いました。」

-では、「写真を撮るときに感情を出来る限り込めない」という小山さんのスタイルは変わってきつつあると?

小山「いや、それは変わらないですね。むしろ、そこに対しては、より忠実でありたいと思っています。よりシンプルに。 撮った後、その写真がどうなっていくのかはまた別の話です。活動の場が広がって来ているので写真を撮るという行為に対して、 より純粋になれるようになってきましたね。」

-自信が出て来たということですか。

小山「すべてに自信があるわけではないですけど、オファーに対して、"自分らしく撮れるだろう、 撮るんだ"という感覚はありますね。多分、それは多少経験を積んだことによるものだと思います。」

-逆に自信がない、という時もあるのでしょうか。

小山「自信という意味では、僕の中では二つあって、一つは写真を撮るということ、もう一つは対外的な評価に対するものですね。 前者はさっき言ったように少し自信がついてきたかもしれませんが、後者に対しては、自信がないというか、 自分ではまったく分からないんですよ。」

-それは自分が写真芸術という世界のどういうポジションにいるのか、ということに対してわからないということですか。

小山「いや、そういうことではなくて、自分に対する世間的な評価などに関してです。まあ、気にしないようにしてます。」

-なるほど。活動を見ていると、ある意味それが小山さんのスタイルということもあると思うんですね。 これまでもどちらかというとそういった評価というものは意識せず、自分の写真を撮ると言う作業に対して、 かなり純度を高くしてやってこられたと思うんです。むしろ淡々と作品を発表しているかというか。

小山「ははは。評価は過去のものに対するものだと思うんですね。既に撮ってしまったものに対して付くわけだから。 だから、評価が良かったとしてもそれが直接今現在の自分の自信に繋がることはないんですね。 僕は自分の作品は、血の繋がった他人、みたいなふうに捉えているので。」

-もし私が小山さんだったら、これは「俺の作品だ!」という自負心みたいなものが出てきそうなものなんですがそういうのもない?

小山「写真というのは、ゼロから産み出すものではないですよね。既にあるものを撮って作品にするわけだから、 自分の作品が100%、僕のものということではないと感じているんですよ。絵だったら自負心はあったかもしれません(笑) 絵はゼロから何かを生み出すものだと思うので」

-小山さんに対するポジションの話でしたが、逆に他の写真家で活動が気になる方はいらっしゃるんですか。

小山「好きだから気になる写真家の方々は何人かいますね。でも、あの人がこうしたから、こちらはこうしよう、 というようなことはありません。この前のSTUDIO VOICEの取材のときも同世代の写真家との対談だったけれども、 みんなやっていることが違うので。」

-読者の中ではある意味ライバル意識もあるんだろうなと思う人もいるでしょうね。

小山「そう。よくライバルなんですか、って訊かれますけど、ちょっと違うと思います。 スポーツと違って写真は人と競い合うものではなくて、自分と戦うものだと思うので。ただ、誰かがやっていることを見て、 凄いな、と思うこともあるし,もっと頑張らないとな、っていうのはあります。」

単なる確認作業にさせたくない。

-写真を撮るために出歩く日数は以前よりも増えましたか?

小山「増えましたね。最近は特に増やしています。写真を撮ると言う行為に対して切迫感が出て来たんです。 撮りたいというのもあるし、撮らなくてはならない、ということもあるし。特に、晴れている日に家でのんびりしている、 ということはまずないですね。欲が出て来たんですね。もっと自分の写真を見たい、もっと撮りたいという欲。」

-こうやって聞いていると、いろんな面で考え方や心理が変化して来たいう印象を持っています。以前に発表された写真集 DarkMatterの作品群よりも現在のほうが、より良い意味で期待を裏切るような作風になっていると私は感じているのですが ご自分ではこの変化も意識されているんでしょうか。

小山「撮っている最中はこれまでと一緒で、シンプルに感情を入れずに撮るようにしています。 だけど、撮ったものをアウトプットするときに、意識的に、いい意味で裏切ろうとか新しいことをやろう、というのはありますね。 そのせいか宮部さんの本のときもそうだし、9mm Parabellum Bulletもそうなんですが、周りの人からは"意外だ" って言われました。」

-なぜ意外なものを出してみよう、と思うんですか。

小山「確認作業になるのが嫌なんです。雑誌に発表済みの作品だけ出しても"あ、小山の写真が出てるな" だけで終わっちゃうと思うんですよ。それって写真が載ってるっていう"確認"でしかないですよね。 この前のSTUDIOVOICEでも見開きの2点は未発表の新作です。たとえ作家紹介でも、そこに新作を出せたら 単なる確認作業にはならないですしね。」

-なるほど。見るほうもそれを期待していくようになりますものね。

「そう思ってもらえたら嬉しいです。だから狙っているというのはありますね。」

-今後の構想について教えてください。

小山「写真集と展示は二本柱でこれからもやっていきます。日本だけでなく海外へ向けた活動にも全力で取り組んでいきます。 写真展では見せ方をもっと変えていきたいと思っています。僕の展示では写真を高速のスライドショーで 見せたりしているんですが、そういった映像的な部分で今後どう見せていくかを考えています。」

小山泰介

1978年、東京生まれ。生命と物質、都市と自然、ミクロとマクロ、瞬間と痕跡などを、 変化と循環のプロセスにある等しいものごととして感知し、その表面に浮かび上がった現象を撮り続けている。 東京を起点に活動中。

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